広告最大手の電通は27日、違法な残業事件を受け、労働環境改革基本計画を発表した。人員の増強や業務の自動化などで、平成31年度の1人あたりの総労働時間を26年度比で20%削減し過重労働問題の解決を急ぐ。ただ、同計画は4月までに公表する予定だったが、とりまとめが大幅に遅れた。山本敏博社長は「30年度末までに改革の基盤整備を完了させる」と強調したが、スピードある改革に向け道のりは険しい。(大柳聡庸)
計画の公表が遅れた理由について、山本社長は記者会見で「電通のやり方や仕組みを一つ一つひもとくのに時間がかかった」と釈明したが、それだけ長時間労働を「是」としてきた企業風土の根深さを物語る。
電通は昨秋以降、午後10時の社内消灯や有給休暇の義務化といった“対症療法”を打ち出してきた。だが、社員からは「家に持ち帰り仕事をしている」との声が上がるなど、抜本的な解決には至っていない。
今回の計画では、31年度の1人あたりの総労働時間を1800時間にする目標を掲げた。このため、サテライトオフィス(外出先の拠点)や在宅勤務を導入するほか、週休3日制への移行なども検討する。
しかし、計画策定を指揮した山本社長自身、労務問題に端を発するインターネット広告の不正請求問題で1月に社内処分を受けている。現経営陣が計画に実効性を持たせられるかは未知数だ。