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東芝が来月10日に提出期限を延期した有価証券報告書の2017年3月期決算をめぐり、PwCあらた監査法人との協議が引き続き難航している。決算が適正という「お墨付き」がない異例の状態で提出する可能性も出てきた。
16年4~12月期は「意見不表明」だった。意見をなかなか出さないPwCあらたには「結論を表明するのが本来果たすべき役割だ」(日本公認会計士協会の関根愛子会長)といった指摘が相次ぎ、包囲網が狭まっている。
東芝は報告書提出の再延期を関東財務局に申請し、上場維持に有利な意見を得る努力を続けることも可能だが、監査法人との対立を理由にするのは難しく、ぎりぎりの決断を迫られる。
東芝は6月末の法定期限を守れなかった理由として、米原発大手ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)の経営破綻に伴う監査手続きなどが7月末までかかることを挙げた。ただ内実はPwCあらたから意見をもらえず、調整の時間を稼ぐ狙いがあった。
PwCあらたはWHの巨額損失が16年末に突然発表されたことに着目し、東芝が早くから損失を知っていたのではないかと疑っている。資産や負債の分野は、WHが破綻で東芝の連結決算の対象から切り離されたため問題ないが、損失認識時期によって変わってくる損益の分野をどう評価するかが焦点となっている。
東芝は「隠蔽(いんぺい)などの疑念を晴らすのに必要な材料は出した」(幹部)とするが、あらたの提携先の米プライスウォーターハウスクーパース(PwC)は慎重姿勢を崩さず、現時点で適正意見を得られるめどは立っていない。
監査意見は「無限定適正意見」と「限定付適正意見」「不適正意見」「意見不表明」の4種類あり、東京証券取引所第1部に上場する大企業の決算には適正意見が付くのが通例だ。