富士フイルムHD、海外子会社の一体経営難しく 言語、文化、商慣行に違い

 富士フイルムホールディングス(HD)のグループ会社で不正会計が発覚した問題は、海外のグループ会社に対してコーポレートガバナンス(企業統治)を発揮することの難しさを改めて浮き彫りにした。言語や文化、商慣行の違いがあり、海外企業の全容を把握したり、一体的に経営していくことは容易ではない。買収した海外企業の経営がうまくいかずに損失を計上する例も多く、M&A(企業の合併・買収)の課題にもなっている。

 今回、不正会計が明らかになったのは、ニュージーランドとオーストラリアにある富士ゼロックスの販売子会社で、富士フイルムHDからは孫会社に当たる。LIXIL(リクシル)グループの不正会計も、買収した独グローエの中国の子会社で起きた。沖電気工業はスペインのグループ会社で不正会計が発覚したが、これは「ひ孫会社」。いずれも、直接の子会社よりも目が行き届きにくいことが一因だ。

 また、海外では、現地の実情に詳しい経営陣に任せることが多く、“放任”になりがちだ。沖電気の問題では、グループ会社の当時の社長(懲戒解雇)が売上債権を過大計上していた。東芝が2006年に買収し、巨額損失の要因となった米ウェスチングハウス(WH)は、原発の老舗企業としてプライドが高く、「ガバナンスや意思疎通などに問題があった」(東芝の綱川智社長)という。

 海外のグループ会社に経営の目を光らせることは難しいが、連結業績に反映されることを考えると、本社の経営陣が重い責任を負っているのは確かだ。13年にソフトバンクグループが買収した米携帯子会社スプリントは当初、経営不振だったが、孫正義社長自らがネットワークの責任者に就任して通信網の品質改善を進め、業績改善への道筋をつけた例もある。(高橋寛次)