■日本流経営生かし地場マーケット開拓
東南アジア最大の経済大国、インドネシア。経済成長による中間層の台頭で個人消費が拡大する同国に、ナンバーワンのリテール(小口金融)銀行を目指して奮闘する日本企業がある。経営破綻したインドネシア商業銀行「ムティアラ銀行」を2014年11月に買収した東証2部上場のJトラストだ。“日本資本のローカル銀行”として再出発した「Jトラスト銀行インドネシア(BJI、旧ムティアラ)」を日系メガバンクとも地場銀行とも異なるビジネスでリテールのトップに育てるというJトラストの挑戦の現場から、急成長するアジアの消費市場を狙う日本企業の課題を探った。
◆買収後初の黒字化
インドネシア・ジャカルタ空港から、「時間が読めない」という慢性的な交通渋滞に巻き込まれ、首都ジャカルタ中心部のオフィス街に予定時刻より遅れて到着した。
BJI本店が入る高層ビルの33階で待っていたのは、インドネシアの民族衣装で正装でもある「バティック」を着た安藤律男頭取。一通りの挨拶を済ませた後、晴れやかな表情で「昨年まで先が見えず毎月の経営会議に出るのが嫌だった。今年1月から不良債権が発生しなければ利益を出せる態勢になりつつある。ひと山越えた」と語った。
BJI買収後も営業赤字が続いた。1年目の15年(1~12月)が59億8300万円、16年は57億9500万円と2年連続で巨額赤字を垂れ流した。
人員削減や支店の統廃合といったリストラ費用などを計上し負の遺産を整理したためだが、この間に大口融資を圧縮し小口融資を積み増すというポートフォリオの組み替えに着手した。資金調達コストの引き下げ、不良債権の回収などにも取り組み、今年1~3月期に四半期ベースで初の黒字化を達成。黒字体質への転換に手応えを得た。