経営再建中の東芝が半導体メモリー事業を分社した「東芝メモリ」の売却交渉をめぐり、米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)が産業革新機構や日本政策投資銀行との共同入札を検討していることが22日、分かった。中国・台湾への技術流出を懸念する政府の意向が強く働いているもよう。激しさを増す争奪戦の有力候補になりそうだ。
5月中旬に行われる2次入札に応札する見通し。関係者によると、政投銀が1千億円規模、革新機構が数千億円を拠出し、買収資金の多くはKKRが負担するとみられる。東芝と提携している米半導体大手ウエスタンデジタル(WD)が少額出資で合流する可能性もある。
3月末に行った東芝メモリの1次入札に日本企業は参加しなかった。ただ、政府は日本の強みであり、官公庁や企業のデータセンターなどに使われる半導体メモリー技術が中国や台湾に流出すれば、日本の安全を損なうと警戒。政府系の革新機構と政投銀は2次入札からの参加を模索していた。
KKRは日本の同盟国である米国のファンドであり、資金力も豊富で日本企業の再生にも実績がある。革新機構などと日米連合を組めば、東芝の半導体メモリー技術を守りながら、国際的な成長力を高めることができるとみられる。
また、同業他社が買収すると、各国当局の独占禁止法の審査が長引く恐れがあったが、ファンド主体の連合であれば、こうした懸念も回避できる見通しだ。
東芝メモリの1次入札ではWD、米半導体大手ブロードコム、韓国SKハイニックス、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の4陣営が売却先候補として残った。だが、WDが東芝との共同生産で結んだ契約を理由に他社への売却を拒否して独占交渉権を要求。買収提示額や政府の思惑なども踏まえると、4陣営にはいずれも難があり、選定作業は難航していた。こうした中で、KKRと革新機構などによる新たな日米連合は、今後の売却先選定の軸になる可能性が濃厚だ。