経営再建中の東芝が12月以降に財務の悪化による工事の受注制限を受けた場合、1兆円規模の売り上げを失う恐れがあることが12日、分かった。東京電力福島第1原発で手掛ける廃炉事業への影響も懸念され、作業が遅れれば信用失墜に拍車が掛かる。受注制限を避けるため事業の分社化も検討するが、新たな火だねとなりそうだ。
建設業法などは4000万円以上の下請け契約を必要とする大規模な工事に「特定建設業」の許可が必要と定め、携わる企業に資本金2000万円以上といった一定の財務の健全性を求めている。
東芝は12月に許可の更新時期を迎える。だが、2017年3月期末に負債が資産を上回る債務超過の額が6200億円となる見込みで、財務改善のため半導体子会社の東芝メモリ(東京)を売却するが、間に合わない情勢だ。
東芝の綱川智社長は11日の記者会見で一部事業を継続できなくなる恐れがあると認め、事業を分社化し、健全な子会社に担わせる考えを示した。ただ受注制限の対象事業は、福島原発の廃炉作業をはじめ多岐にわたり、円滑に進むかは疑問だ。
既に海外原発事業からの撤退は表明しているが、廃炉などの国内原発事業は社会的責任があるとして継続する方針だ。対応が遅れれば事業に携われない可能性もある。
東芝は16年3月期の連結決算で5兆6686億円の売上高を計上した。福島第1原発では、炉心溶融で溶けた核燃料(デブリ)の実態把握や、汚染水から放射性物質を除く装置などを手掛けている。