日本政策投資銀行と官民ファンドの産業革新機構は28日、経営再建中の東芝が分社化して設立する半導体新会社「東芝メモリ」の入札に参加しないことを決めた。29日に出そろう応札企業の顔ぶれや出資額を見極めた上で、日本の安全保障の重要パートナーである米国の企業と共同出資する案を軸に検討を進める。“日米同盟”で東芝を支援し、半導体技術の海外流出に一定の歯止めをかけることができるかが焦点となる。
東芝メモリの入札は29日に受け付けを締め切り、海外から10陣営程度の参加が見込まれる。米国からは、東芝と四日市工場(三重県四日市市)を共同運営する半導体大手ウエスタンデジタル(WD)やマイクロン・テクノロジー、ファンドのシルバーレイク・パートナーズやベインキャピタルが応札する見通し。
このほか、台湾からも電子機器受託製造サービス(EMS)大手の鴻海(ホンハイ)精密工業、半導体受託製造大手の台湾積体電路製造(TSMC)が応札する意向だが、鴻海の郭台銘会長は中国本土の指導部ともパイプを持ち、東芝の半導体技術が流出する懸念が政府や経済界では強い。
東芝の綱川智社長は14日の会見で「半導体は国の安全なども関係するので、それを意識して相手先を選ぶ」と明言。東芝の社外取締役を務める経済同友会の小林喜光代表幹事も28日の会見で「米国の会社と今までも提携しているのだから、そこでブロックしていくべきだ」と、WDなど米企業への東芝メモリ株売却が妥当との見解を示した。