台湾の精密大手、鴻海(ホンハイ)精密工業を率いる郭台銘会長が日米で蠢いている。トランプ政権に食い込み米国への本格進出を狙う一方、日本では傘下に収めたシャープに続き経営難の東芝の事業買収を狙う。郭氏の背後には盟友、ソフトバンクの孫正義社長の影がちらつき、世界を股に掛ける両者から目が離せなくなってきた。
昨年12月。ニューヨークでトランプ米大統領と会談した孫氏は、米国での500億ドルの投資と5万人の雇用創出を約束し、「孫氏は偉大な人だ」と大統領を感激させた。その孫氏が手にしていた資料に、「FOXCONN」というロゴが載っていた。言うまでもなく鴻海のブランド名だ。孫氏がメディアに自ら明かすことはなかったが、資料には、鴻海とともに投資や雇用創出を進めることを感じさせるくだりもあった。
「テリー・ゴウ(郭氏)が動き出した。狙いはソフトバンクと孫氏の背中に乗っての米国への本格進出だろう」。米IT大手の関係者はそうにらむ。鴻海は米アップルのiPhone(アイフォーン)の製造を一手に担う。孫氏の訪米直前には、鴻海がアイフォーンの生産の米国への移管を検討しているとも報じられた。製造業の米回帰を掲げるトランプ氏は、企業に米国への投資を呼びかけている。もしも報道通りなら、鴻海は米本格進出の足がかりを築き、アップルもトランプ氏の機嫌を取ることができそうだ。孫氏の資料はそうした動きに符合する。