自動車業界に詳しい三菱UFJモルガン・スタンレー証券の杉本浩一シニアアナリストは「日本からの輸出に切り替えるところが出てくるかもしれない」と話す。
ただ、トランプ氏は日米の貿易不均衡の要因として日本の自動車市場をやり玉にしている。米国への輸出が増えるとさらに批判を受けかねない。
スパイサー氏の発言について、関税ではなく、米共和党が提案する法人税改革を指すとの見方が強い。米国に生産拠点を持ち、海外に輸出する企業を優遇する一方、米国内の企業が製品や部品を輸入する際の課税を強化する仕組みだ。
部品会社も戦々恐々
メキシコにとどまらず、日本を含めた全ての国の輸入品に該当する恐れがあるが、日本政府内では「輸出企業を優遇する補助金とみなされて世界貿易機関(WTO)協定違反と認定される可能性がある」(経済官庁幹部)との指摘が出ている。米国の自動車関連企業も多数メキシコに進出しており、影響が米国に跳ね返ってくる事態も考えられる。世界中から商品を仕入れる米小売業の利益も減少しかねない。
部品会社も戦々恐々だ。トヨタ自動車グループのデンソーはメキシコでカーエアコンやエンジン関連の部品を生産し、一部を米国に輸出。「トランプ氏の政策が実現可能かどうかを含め、動向を見守るしかない」と警戒する。自動車の内装品などを手掛ける住友理工の西村義明会長も「自動車メーカーが撤退すれば追随を検討せざるを得ない」としている。広島県の部品会社は「マツダの生産台数が減れば大きな影響を受ける」と懸念を示した。