2016.11.30 05:00
□法政大学大学院政策創造研究科教授、アタックスグループ顧問・坂本光司
小田急線柿生駅からタクシーで10分ほど走った川崎市麻生区の住宅街の一角に、柿の実学園が経営する「柿の実幼稚園」がある。敷地面積は広大で約1万平方メートル、園児はなんと1500人、先生も200人と、全国最大規模である。
規模もさることながらが、特筆すべきは、多様な障害のある園児がなんと約200人も在園している点だ。ほかにもさまざまな理由で障害者手帳を持たない障害児が約100人と、合計では300人もいる。つまり、園児の20%、5人に1人は障害児である。障害児の在園している幼稚園は少なからずあるが、柿の実幼稚園こそ、間違いなく日本一の幼稚園である。
障害児も軽度や中度の障害のある園児たちもいるが、中には毎日、頻繁に吸引が必要な園児や全盲、自閉症、さらには横たわったまま移動せざるを得ない園児も多数いる。いやはや素晴らしい幼稚園である。
柿の実幼稚園の開園は、今から55年前の1962年、住職だった現園長の義理の父が、地域の要望を受け現在地でスタートした。開園時の幼稚園の規模は、約200人定員と普通の規模で、障害児も現在のように多くいる園ではなかった。
しかし、開園以来の熱心な保育と良い環境が、保護者や園児の支持を集め、うわさを聞きつけた全国からの入園希望が相次ぎ、規模を拡大せざるを得なくなり現在にいたっている。
障害児の入園は「みんなちがって、みんないい…」というスローガンの下、開園当初から自然に行っていたが、今日のように多数の園児を預かるようになったのは、現園長の小島澄人氏の考えが大きい。