本を音声データにして耳で楽しむ「オーディオブック」が拡大の兆しをみせている。スマートフォンの普及で「いつでもどこでも聴ける」環境が整い、芥川賞作品やベストセラーなど人気書籍も相次いで音声化。この2年ほどで利用者が急増している。米アマゾン傘下で世界最大の配信サービス会社が日本市場に参入したのも追い風だ。“ながら聴き”という読書スタイルが支持され、有望市場に成長すれば、低迷する出版業界が活性化しそうだ。
米アマゾン系上陸
「世界の利用者は年40%増を続けている。今年のオーディブル利用時間は20億時間で、2年前の2倍だ」
アマゾン傘下の米オーディブルのベス・アンダーソン副社長はこう述べ、胸を張る。世界最大のオーディオブックサービスの同社は昨年7月、日本に初上陸。月額1500円で聴き放題の定額配信サービスを打ち出し、話題を呼んだ。
オーディブルはスマートフォンやパソコンにアプリをダウンロードすれば、いつでもどこでも対象書籍を聴くことができる。大手出版社と契約を重ね、今では1万冊以上を配信する。今月は俳優の風間杜夫さんが朗読する「ハリー・ポッター」シリーズ全巻の配信を発表した。
米独仏など7カ国に拠点を置くオーディブルだが、定額配信サービスは日本市場が最初だ。欧米に比べて日本はオーディオブックになじみが薄い。アンダーソン氏は「(定額化は)とにかく試してもらうため。使ってもらえればユーザーは広がる」と自信をみせる。