【高論卓説】トヨタ流「仲間づくり」は欧米対抗の要 次の100年 日本の産業発展支える (1/2ページ)

トヨタ自動車の豊田章男社長とスズキの鈴木修会長(右)=12日、東京都文京区
トヨタ自動車の豊田章男社長とスズキの鈴木修会長(右)=12日、東京都文京区【拡大】

 フランスで開幕された今年のパリモーターショーはさながら自動車の“大電化ショー”となった。「ゴルフ」の価格帯で400キロ以上の航続距離を持つコンセプトカーがショーの目玉となってくれば、電気自動車(EV)の時代が現実的に迫っていることを思い知らせる迫力がある。独フォルクスワーゲン(VW)のディーゼル不正事件以降、初のメジャーショーとなるパリには、「電化」を軸に危機を乗り切ろうとする欧州メーカーの強いメッセージが込められていた。

 VWのEVコンセプトモデル「I.D.」は、1回の充電で走行できる距離が400~600キロにも達するという。ちなみに、現在の日産の「リーフ」が280キロである。「ゴルフ」並みの価格を目指すというから、実現すれば驚きだ。フランス勢も黙ってはいない。ルノーは「リーフ」派生車である「Zoe」のEVレンジを従来の240キロから400キロへ引き上げたモデルを発表し、あからさまな対抗意識を示した。

 VWディーゼル不正問題は、欧州自動車会社の技術戦略に多大な影響を及ぼす結果となった。ディーゼルや直噴ダウンサイジング・ガソリン技術で先行する戦略は、大きな曲がり角に差し掛かっている。加速化されて規制効果を受ける排ガス規制への対応には、排気量の大型化や補充機器追加による車重増大を招き、小型化・軽量化が必須な環境規制との整合性が難しくなってしまった。

 世界一厳しい環境規制を実施し、その技術開発へサプライヤーを開発の早期段階で巻き込み、先立って先進技術を確立する。技術の標準化を進め、新興国を囲い込んでいくことは欧州産業戦略の基本であった。燃費規制と対応技術は、まさにその典型例といえるだろう。しかし、VWの犯した不正の結果、戦略は落とし穴に陥り、自らが敷いた規制の中で、対応と費用増大に苦しむ結果を招いた。

この戦いは、どの国も負けることが許されない