名古屋大発ベンチャーとアイカ工業 地域と産官学の連携モデル展開

高齢社会街づくり研究所などが開催したIWAOモデルに関する記者懇談会=20日、東京・有楽町
高齢社会街づくり研究所などが開催したIWAOモデルに関する記者懇談会=20日、東京・有楽町【拡大】

 名古屋大発ベンチャー「高齢社会街づくり研究所」(名古屋市)と、住器建材の製造・販売「アイカ工業」は、地域社会と産官学が連携して医療と介護、人材教育を統合し、街全体で高齢者をケアする仕組み「IWAOモデル」を本格展開する。

 高齢社会街づくり研究所は2011年に発足。同社の岩尾聡士代表(藤田保健衛生大教授)は、IWAOモデルを提唱しており、第1弾として在宅ケアの教育研修センターが11月上旬、名古屋市内に開設される。医療法人陽明会グループが運営し、医師や看護師、介護士、理学療法士などの担当チームによる最適なケアが入居者一人一人に計画されている。陽明会の岩尾康子理事長は「医療依存度の高い高齢の方を受け入れる住宅の整備や、自宅での療養支援を行っていく」と述べた。

 アイカ工業は、IWAOモデルに賛同し、衝撃を吸収するメラミンフロアや、車いす対応の洗面カウンター、抗菌・消臭壁材など介護・医療施設や高齢者住宅向けのさまざまな建材を岩尾代表と共同開発してきた。

 IWAOモデルを推進する背景には、病院、介護の現場における高齢者ケアの厳しい現実がある。

 日本創成会議によると、15年と比較した25年の東京圏の介護需要は、全国平均の32%増に対し、東京都は38%増、埼玉県は52%増、千葉県は50%増、神奈川県は48%増。東京圏全体での介護施設の不足が深刻化する。また、団塊の世代が後期高齢者となることで介護・医療費など社会保障費の急増が懸念される「2025年問題」も現実味を帯びる。岩尾代表は「地域レベルで介護と医療をシームレスに統合するIWAOモデルは、有効なソリューションとなる」と期待している。