三越伊勢丹ホールディングスが東京・新宿に出店予定の大型免税店の開業の延期を検討するのは、訪日客消費を牽引(けんいん)してきた中国人客の“爆買い”に陰りが見え始めているためだ。百貨店など流通各社は需要を取り込もうと、中国人向け決済手段の整備や中国語が話せる店員の採用など中国人客シフトを強化してきたが、円高の進行や中国政府の政策変更で状況は一変した。各社とも戦略の見直しが急務となっている。
「高額品も売れなくなったが、買い物自体をしない中国人客も増えている」
銀座地区の大手百貨店関係者は中国人客の変化をこう指摘する。
観光庁の2016年4~6月期訪日外国人消費動向調査によると、訪日外国人旅行消費額は前年同期比7.2%増の9533億円と伸びている。だが、1人当たりの旅行支出で中国は22.9%減の22万円と大幅に減少。ベトナムやオーストラリアなどに抜かれ前年の1位から5位に後退した。「爆買いは沈静化」(日本百貨店協会の近内哲也専務理事)との認識を裏付ける結果となっている。
訪日客の数は中国人も増えており、各社とも人気の化粧品や消耗品を充実させる動きもある。流通業界に詳しい日本経済大の西村尚純教授は「今後は中国だけでなく、欧米やアジアからの訪日客のニーズにきめ細かく対応する必要がある」と指摘している。(永田岳彦)