□ワールド・ワイズ・ジャパン代表、LOGOSプロジェクト主幹・濱口理佳
先週、遊技産業に関連する2つの白書が発表された。一つはダイコク電機の「DK-SIS白書2015」発刊に伴う記者会見。もう一つは、日本生産性本部余暇創研が行った「レジャー白書2016」の概要発表。ともに内容は芳しくなく、厳しい業況を露呈した。
この責任は、ほかでもない自分たち業界の中にあるのだが、今般の遊技機市場のシフトに関しては、個人的に「本当にこれでいいのか」と思う節がある。
というのも、「そもそもギャンブル依存症は射幸性を抑制すれば防止につながるのか」というのが一つ。また、遊技機の不正防止を目的に、パチスロに不正監視のための役比モニタが搭載されることになったが、それで本質的な解決につながるのかということだ。
これらの施策に関して、ともに欠落しているのが“人”という視点ではないか。前者においては、まずもって「依存する人」の生態や志向が十分に解明されていないところに、のめり込み対策として遊技機の射幸性の抑制が始まった。行政がそういう意向を示した以上、業界は従わざるを得ないだろうし、実際、射幸性の上昇が遊技における高額投資を引き起こす一つの要因となった。そう考えると、ある程度の射幸性抑制策はパチンコ・パチスロの娯楽としての成長には有効に働くと思われる。しかしながら、ここでまた「適切に遊んでいる大半の人々=ファン」という“人”の視点が欠落しては、市場の好転は難しい。業界の都合、行政の都合の前に、産業を支えてくれている“人”の都合があるべきだ。
一方、遊技機の不正防止に関しては、システムが整ったところで、それを扱う“人”の不正に対する意識が変わらなければ、適切に機能しない。遊技業界はこれまでもあらゆる形で不正対策に着手してきたが、肝心なのはそこで働く人の倫理観だ。何度も同じ過ちを繰り返す背景には「システムが変わっても、人が変わらない」背景があるのではないか。
遊技機が変わっても、環境が変わっても、人が変わらなければ、そこから紡ぎだされる産業像は変わらない。そのことをいま一度、思い返す時期だと思う。
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【プロフィル】濱口理佳
はまぐち・りか ワールド・ワイズ・ジャパン代表、LOGOSプロジェクト主幹。関西大学大学院文学研究科哲学専修博士課程前期修了。学生時代に朝日新聞でコラムニストデビュー。海外でのフィールドワークを通じ遊技産業に関心を持ち、関連メディアへ。2009年、ワールド・ワイズ設立。11年にLOGOSプロジェクトを立ち上げた。