和歌山放送で開かれた「ワイドFM開局記念式典」。左は仁坂吉伸和歌山県知事=5月30日、和歌山市【拡大】
AMラジオの番組をFMでも流す「FM補完放送(ワイドFM)」が全国に広がってきた。災害時にAMの送信所が被害を受けてもFMで放送を続けられるため、防災対策の強化につながる。音質が良くなり、AMの電波が入りにくいビル内でも受信状況が改善される効果も。聞くには対応ラジオが必要だが、リスナーからはクリアな音で野球中継や音楽を楽しめると好評だ。
◆新番組を検討
和歌山放送(和歌山市)では5月30日、中島章雄社長ら約40人がカウントダウン。ワイドFMの開始が宣言されると、大きな拍手が起きた。南海トラフ巨大地震の津波被害が想定される和歌山県にとって防災面の期待は大きい。記念番組に出演した仁坂吉伸知事は「(非常時には)携帯型ラジオを持って逃げることが大切だ」と呼び掛けた。
AM送信所は広くて平らな土地が必要なため、和歌山放送でも一部が海岸近くにある。一方、FM送信所は山間部でもよく、標高775メートルの地点などに新設した。AMが津波で停止してもFMで災害情報を流し続けられる。
新たなリスナーを呼び込む好機にもなりそうだ。和歌山放送は音質にこだわった音楽番組の新設を検討している。報道制作局の平井理弘専任局長は「ワイドFMを起爆剤にして、若い人が興味を持つ番組を放送したい」と意気込む。
ワイドFMはテレビの地上デジタル放送移行で空いた電波の帯域を活用し、従来のFMの周波数の上限より5メガヘルツ高い95メガヘルツまでを使う。2014年12月から放送が始まり、今年6月までに25社が対応した。北陸放送(金沢市)や北海道放送(札幌市)での開始も決まっており、今後も拡大する見通しだ。
昨年10月に始めたCBCラジオ(名古屋市)はプロ野球中継に力を入れる。ナゴヤドームの試合では臨場感を高めようと、新たに音声補正装置を入れて、外野席のマイクが拾う音を大きく聞こえるようにした。