日本人8人が死傷したバングラデシュの飲食店襲撃テロで、日本政府が注力する海外インフラ輸出に影を落とす可能性が浮上している。政府は「質の高いインフラ投資」を日本の経済成長へとつなげる方針を掲げるが、今回のテロは、海外における事業展開のリスクを改めて浮き彫りにした格好だ。
8人は国際協力機構(JICA)が主導するダッカの交通渋滞解消が目的の事業調査に関わっていた。ダッカは渋滞で年約2600億円の経済損失を被っていると試算される。日本政府は6月、バングラデシュ政府と約1735億円を限度額とする円借款に関する書簡を交換。対象案件には渋滞緩和を図る都市高速鉄道の整備が盛り込まれた。
渋滞緩和を図る交通マネジメントは、日本のインフラ輸出でも“お家芸”だ。
モータリゼーションの進展に伴う新興国の渋滞問題は、日本も成長過程で直面し経験値が生かせる。道路交通網の構築や都市鉄道、交通系ICカードを組み合わせた技術は海外の評価が高い。インドのデリーやインドネシアの首都ジャカルタでは、日本企業が中心のプロジェクトが進む。
それだけに政府は今回のテロに神経をとがらせる。