□シュアール・大木洵人社長
聴覚障害者がいつでもどこでも不自由なく会話できる遠隔手話サービス「モバイルサイン」で2012年度のイノベーションズアイアワード(現在は革新ビジネスアワード)大賞を受賞したシュアール。その後もITを駆使して聴覚障害者向けサービスを開発していった。大木洵人社長率いる慶応大発学生ベンチャーが生み出したビジネスモデルは、聴覚障害者の生活向上や社会進出に大きく貢献している。
--受賞で変わったことは
「売り上げは3年前の4.5倍に拡大し、オフィスを神奈川県藤沢市から東京・目黒に移転することができた。われわれにとって最も重要な経営資源である人材も、以前は採用するのに『紹介して』と頼んでいたが、今では『働きたい』と来るので面接で選べるようになった。この間、パートから正社員になったり、聴覚障害者を採用したりして増強、人員は1.5倍に膨らんだ。受賞をきっかけに信頼が高まり、業績も向上した」
--モバイルサインを採用する企業が増えている
「6月3日に、おかやま信用金庫と提携した。信金では初、西日本の金融機関としても初めてだった。これにより同信金は『聴覚障害者が安心して来店できる店舗環境を実現するとともに、円滑な意思疎通を図ることができるようになった』という」
--タブレット端末やパソコンなどを使えるIT環境があればモバイルサインを使える
「最近は社内コミュニケーション手段として使われ始めた。働く聴覚障害者の社内会議や電話の通訳を行う。細やかなコミュニケーションが可能となり、聴覚障害者のキャリアアップにもつながる。またコールセンター型通訳にも期待している。電話での申し込みや問い合わせができない聴覚障害をもったお客さまに、企業の代わりに手話対応する。花王グループが昨年10月に手話専用の相談窓口を初めて開設した」