鉄鋼大手が女性の採用を増やしている。「男の職場」のイメージが強い製鉄所でも、最近は女性の姿が目立つ。子育てと仕事を両立できるよう、職場環境の整備にも取り組み始めた。鉄鋼業界も他業界と同じく、人手不足に直面している。それに加えて、「技能伝承」という業界特有の問題が各社を積極姿勢に転換させた。
クレーンも夜勤も
茨城県鹿嶋市の新日鉄住金鹿島製鉄所。製造ラインを流れてきた巨大な鋼板が、強力な磁石のついた「パイラークレーン」で巧みにつり上げられ、倉庫に送り出されていく。
鋼板は何枚も重なっていて、引き上げる数に応じて磁力を変える必要がある。左手で磁力を微妙に調節しつつ、右手でクレーンを操作しなければならないが、富永莉穂さんは新人とは思えぬ落ち着いた様子でこなしていく。
その細やかな操作ぶりを、同じチームの男性社員は「やさしいクレーン」と褒めたたえる。