先日、私は20年ぶりの再会を果たした。お会いしたのは、学生時代、東京駅にあったアルバイト先のレストランに、毎朝立ち寄ってくださったお客さまだ。毎朝、コーヒーとチェリーデニッシュをご注文されたので、アルバイト仲間の間では「チェリーデニッシュのおばちゃん」と呼ばせていただいていた。
私のアルバイト最後の日に、住所を交換し、それ以来、年賀状でずっとやり取りをしてきた。毎年「今年こそは会いたいです」と書きながら、なかなか会えずにいたが、ようやく実現した。
20年ぶりということで、お互いにわかるかしらと思ったものの、心配には及ばず、会った瞬間、時を越えて、あっという間に当時に戻ったかのようだった。「茅ケ崎から東京駅に来て、あなたたちのお店でコーヒー飲んでホッとしてから、飯田橋まで出勤していたのよ。あなたたちがいてくれたから、毎日、頑張れたのよ」と当時を振り返ってうれしそうに話してくださった。
「そんなふうに思っていてくださったんだ」と目頭が熱くなった。定年退職されて、今は趣味を楽しんでいるご様子。とってもお元気で、会えてよかったと心から感謝の気持ちでいっぱいになった。
当時は、アルバイトの仲間たちと、わいわい楽しく働いている、ただそれだけだった気がする。自分が周りに与えている影響というのは、わからないものだ。読者の中にも、「あの時、あなたがいてくれたから乗り越えられた」「あの時のあなたのひと言に勇気をもらった」と言われ、自分は覚えていなかったという経験があるかもしれない。