「民泊」の法的位置付けを検討する厚生労働省と観光庁の有識者会議が、発足から4カ月足らずの短期間で一定の方向性をまとめたのは、安倍晋三政権が観光立国を成長戦略の一つに掲げているためだ。違法な“ヤミ民泊”の横行も対応を急がせた。ただ、規制緩和の具体案をめぐっては近隣住民とのトラブル防止や宿泊業界との利害対立など課題が多く、まだ行方は見通せない。
たとえば今回、現行法の規制対象外とする方向がまとまった「ホームステイ型民泊」。家主がいれば、宿泊客が夜中に騒ぐといったトラブルの懸念が小さく、国際交流の拡大にも資すると同会議は判断した。
しかし、推進派からはトラブルへの対応を管理事業者に義務付けた上で、家主不在でも営業を認めるべきだとの意見が強い。
一方、民泊と競合する旅館・ホテル業界は他国の例にならい「年間30日以内」などの営業制限を求めている。
ほかにも、戸建て住宅とマンションなど集合住宅との線引きや、都市計画法上の住居専用地域内でも営業を認めるのかといった検討課題が山積する。有識者会議が15日まとめた中間整理案も一連の課題については“両論併記”の状態だ。
ただ、この間にも“ヤミ民泊”は横行。民泊仲介サイトの米エアビーアンドビーへの国内登録物件は、2月時点で3万件と前年同月比4倍を超えた。
有識者会議は議論を加速し、今夏以降の予定だった報告書の策定時期を6月に早める。その後、ホームステイ型民泊を旅館業法上の新しい営業形態とするか、または新法を制定するかを検討する段取りだ。
しかし、議論が具体的になるほど意見の対立は先鋭化するとみられ、今後の展開は予断を許さない。(山沢義徳)