2016.2.10 05:00
初めてマイナスとなった10年国債の利回りを示すボード=9日午後、大阪市【拡大】
9日の東京金融市場では長期金利の代表的な指標である10年国債の利回りが初めてマイナスとなったが、マイナス金利政策を日本に先駆けて導入した欧州では民間銀行が大口預金を中心にマイナス金利を適用し、手数料を取る動きが広がっている。企業だけでなく個人を対象にした例もあり、「欧州で個人には適用されておらず、日本でも可能性はない」とした黒田東彦日銀総裁の説明の妥当性が問われそうだ。
スイスのオルタナティブ・バンク・スイスは今年1月から個人が保有するすべての当座預金に年0.125%のマイナス金利を適用した。
広報担当者は「中央銀行によるマイナス金利政策はわれわれの経営に痛手となっており、費用の負担を顧客にお願いするしかない」と説明する。
ドイツのコメルツバンクやスイスのクレディ・スイスなど、欧州の主要銀行も大口顧客の預金に対し、残高に応じマイナス金利を課す。対象は企業が中心だが、欧州の邦銀関係者は「日本円換算で数億円以上の富裕層の口座も多く含まれる」と話す。
日銀によるマイナス金利の適用範囲が限定されていることもあり、邦銀の多くは「口座手数料の導入は、個人、法人とも検討していない」(三菱東京UFJ銀行広報)との立場だ。
だが、大和総研の菅野泰夫ロンドン駐在エコノミストは「欧州中央銀行(ECB)がマイナス金利の導入を決めた際、ユーロ圏の銀行が顧客への費用転嫁を始めたのは半年から1年後だった」と話し、日本でも今後、何らかの手数料が導入される可能性はあるとの見方を示す。