木造注文住宅の設計・施工を行う伊佐ホームズは、日蓮宗の大本山である「池上大坊 本行寺客殿」(東京都大田区)の建て替え工事を行い、完成した。鉄筋コンクリートの半地下の上に国産材を使った本格的な木造建築が載る構造で、延べ床面積は約1320平方メートルと同社が施工した物件では過去最大規模となった。政府は林業の再生を重点課題として掲げており、国産材を活用した建築の普及を進めようとする動きも顕在化している。今回のプロジェクトは林野庁なども注目しており、伊佐裕(ひろし)社長は「環境対策や地方再生のつなぎ役を果たしており、意義深い」と話す。
完成した客殿は法事や法要の場として活用される。計画の決定以来、3年3カ月の設計・工事期間を経て完成した。
柱や梁(はり)などには国産のマツを多用。「日本建築が持つ美しい秩序と端正さを継承しながら、穏やかな空間を再現した」(伊佐社長)。壁には不燃クロスを採用するなど徹底的な耐火策を講じている。
また、同寺には1600人の檀家(だんか)がいるため高度な管理体制が求められる点を考慮。事務室も広い面積を確保した。
ハードルが高かったのは、100人規模が1カ所に集まることができる法事用の大広間だ。一般的な木造住宅の場合、柱と柱の長さは最大で3.6メートル。これに対して今回の建物は8.6メートルを確保したからだ。強度を高めるため活用したのが高さ48センチの集成梁。これを11本活用することによって、鉄骨住宅並みの強度を確保した。
伊佐ホームズは、国産材を主要構造部材に活用した木造住宅の普及活動にも乗り出している。力を入れているのが、サプライチェーン・マネジメント(SCM)の構築。その一環として、埼玉県秩父産の住宅用木材に、伐採した日付や生産者などの情報を2次元バーコードの「QRコード」の形で記録し、木材の品質を保証する取り組みに参画している。