近年、企業のグローバル展開は当然のことのようになっているが、地方創生を担うべき各地の中堅企業には大きな悩みが生じている。知財経営の専門部署である知的財産部やその柱となる知財人材が不在のまま、グローバル展開を続けていることだ。
「経営会議では、担当役員が研究開発部門の出願担当者から報告された特許出願状況を説明するものの、経営課題として議論されることもなく、他の役員も関心を示さない」(素材メーカーの幹部)という話からは、知財面の事業リスク対応が放置されたまま、知財戦略的発想も十分に浸透していないことがうかがえる。大手の経営会議で特許部が重視されなかった時代の光景とだぶる。
中堅企業には研究開発で海外企業などと連携したり、海外に研究開発部門を設立したりするケースもある。しかし「グローバル化しろと言うだけでリスク面を言わない行政は、グローバル化での失敗を仕向けている面がある」とある知財コンサルタントは厳しく指摘する。
発明推進協会の担当課長は「ここにきて知財部門の組織形成やその業務についての相談が増えている。国内外のネットワークを生かし、地方への出張も含め、カスタムメードなユーザーに寄り添うサービスが期待される」と説明するが、地方の中堅企業が知財部門をいざ立ち上げようとすると、相談できる先が身近にはないという現実にも直面する。