中国を中心に海外生産の製品が幅を利かす靴下業界のなかで、国内生産にこだわる会社が東京都葛飾区の砂山靴下。機能や素材、ニーズに特化した製品開発に力を入れることで、存在感を高めている。
砂山靴下のショールームにはユニークな製品が並ぶ。シルク素材をふんだんに使った生活雑貨「コクーンフィット」、快眠を促す女性用肌着「ネルネ」、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)対策をコンセプトとした靴下や肌着の「ロコトレ」など。どれも通信販売で女性を中心に支持されている商品だ。
「靴下は3足で1000円くらいという漫然としたイメージが消費者に出来上がっている。これを打ち破りたかった」と砂山直樹社長は話す。そもそも靴下といえば、スーパーの肌着売り場でしか売られていないイメージが強いが、「健康雑貨や美容雑貨などとして、付加価値を付けた商品ならもっと販路を広げられる」(砂山社長)と考えた。
砂山社長が繊維関連の専門商社を経て砂山靴下に入社したのが1993年。当時は、大手流通各社によるOEM(相手先ブランドによる生産)を請け負い、売上高の85%をOEMで占めていた。
ところが円高で生産ラインの海外移転が進む。今でこそインターネットやカタログなどによる通信販売が普及しているが、当時は小売店の店頭販売が主力。構造的に薄利多売を求めざるを得ない状況だった。
さらに同社に追い打ちをかけたのが、脚にストッキングを履かない「生足」、靴下を履かない「素足」のブーム。90年代後半、女性社員の多くがストッキングや靴下を履かなかった。
ストッキングや靴下を履かないと、かいた汗がもとで臭いが付きやすくなったり、角質が硬くなるなど肌荒れの原因にもなるという。「昼間が生足、素足でいるのだったら、夜間に足のケアに役立つ製品を作れば、女性のニーズに応えられる」と考えた。