近畿日本鉄道グループが4月、純粋持ち株会社制に移行し、「近鉄グループホールディングス(HD)」が発足した。事業会社の自立的経営を促すため鉄道の事業会社の下に、流通や不動産、ホテルなどの事業会社を置く経営形態を改め、HD傘下に鉄道を含む150社を平等にぶらさげている。ただ、社運をかけた日本一の超高層ビル「あべのハルカス」(大阪市阿倍野区)では中核施設の近鉄百貨店本店が苦戦から抜け出せていない。グループの連携の試金石となるだけに、HD首脳はいら立ちを募らせる。(橋本亮)
勝ち残りを賭け
「時代の先駆けとなる企業だけが生き残っていくことができる。競争を勝ち抜く強い近鉄グループを目指すことが最良と判断した」
近鉄HDの小林哲也会長は4月1日に行われた入社式で、新入社員を前に新体制移行の意義を説いた。
新たに発足した持ち株会社には、鉄道事業を担う近畿日本鉄道や近鉄不動産、ホテルや旅館を手がける近鉄・都ホテルズなど、事業別の子会社約150社が並列にぶら下る。近鉄百貨店や旅行のKNT-CTホールディングスといった上場会社も傘下に入り、日本有数の鉄道グループを形成。鉄道会社が親会社としてグループの他の事業会社を率いてきた体制を大きく変えた。
総延長約500キロと私鉄では日本一の路線距離を誇る近鉄は他の関西私鉄に比べ鉄道事業の比率が高い。近鉄の26年3月期連結決算では、鉄道を含めた運輸事業の営業利益は303億円で、全体(546億円)の半分以上を占める。これに対し、傘下に阪急電鉄と阪神電気鉄道を抱える阪急阪神ホールディングスは4割程度、京阪電気鉄道に至っては3割弱に過ぎない。
少子化による沿線人口の減少などで今後、大幅な収入の増加が見込めない鉄道事業にかわる成長の柱として、不動産や流通事業などの強化を急ぐことが勝ち残りには欠かせないのだ。