3月決算の上場企業では、6月の株主総会に向けた準備が本格的に始まった。今年の焦点は何と言っても「社外役員」選びだろう。5月1日に施行される改正会社法によって、社外取締役が一人もいない場合には「(社外取締役を)置くことが相当でない理由」を説明しなければならなくなる。置かない方が良い理由、というわけだから、その説明は至難の技である。つまり、実質的に社外取締役の選任が“義務化”されたのに等しい。
さらに東京証券取引所と金融庁の有識者会議がまとめたコーポレートガバナンス(企業統治)・コードは、さらに厳しい。これは上場企業としての「あるべき姿(ベスト・プラクティス)」を示したもので、順守が義務付けられるわけではないが、順守しない場合にはその理由を説明しなければならない。コードでは、独立性の高い社外取締役2人以上の選任が「あるべき姿」として示されている。
東証の調べでは、昨年7月現在の市場第1部上場企業1814社のうち、社外取締役を置いている企業は全体の74.3%。1年前は62.3%だったから急激に増えている。467社がゼロだったが、おそらくこれらの企業のほとんどが社外取締役を選任するだろう。ほぼ100%の会社が社外取締役を置くことになるに違いない。
社外取締役義務化に反対していた企業の多くは、人選が難しいことを理由に挙げていた。適任者が見つからない、というわけだ。実際、昨年7月段階で1人しか社外取締役がいない725社と、ゼロの467社が、2人になるように人数を増やせば、1659人の社外取締役が必要になる計算だ。弁護士や会計士、大学教授や役人OBなど、目ぼしい人材はすでに何社もの社外取締役を務めている。