□日本サイトM&A協会代表理事・和家智也
「サイト売買」市場が拡大している。企業がウェブ事業の拡大や、ウェブ事業の選択と集中のための事業戦略としてサイト売買を活用している。サイト売買は、ウェブサイト(商用ホームページやネットショップ)のみを売買する。M&A(企業の合併・買収)と同じ手法だが、企業全体を売買するのではなく事業の譲渡になる。インターネットの普及に伴い、ウェブサイトやネットショップに価値を見いだす人が現れ、ウェブサイトが新たな資産となった。そこで売り手と買い手によって売買される市場が誕生したわけだ。
不動産の売買を例にとって説明しよう。ビルやマンションを売買する人もいれば、飲食店、薬局、美容室など店舗を売買する人もいる。これらの店舗売買は、あくまで店舗の所有者だけが変わる「オーナーチェンジ」というパターンだ。オーナーチェンジでは、場所もメニューも看板も変わらず、そのまま顧客も利用を続けられるのが一般的だ。このようなオーナーチェンジをネットの世界で行うのがウェブサイトの売買である。
例えば、ネット上で化粧品の通販を行っているネットショップが売買されたとする。その場合、ネットショップのドメイン(インターネット上の住所にあたる)、ブランドやネーミング、商品仕入れ先のみならず、顧客や会員もそのまま引き継がれる。サイトが売買されて、すぐに化粧品のブランドを変えたり、取扱商品や商品単価をガラッと変えてしまったりすると客離れのリスクがあるため、新しいオーナーはあえて行わない。つまり、基本的にネットショップの所有者が代わっても、これまでと同じネットショップで、同じ化粧品が買える-といった具合だ。