ヤマト運輸が、宅配便の配送網を活用してダイレクトメールやカタログなどを運ぶ「クロネコメール便」を3月末に廃止する。手紙などの「信書」をメール便で送った顧客が郵便法違反に問われるケースが相次いでいるためだ。取扱数が年間20億冊を超える人気のサービスにもかかわらず、同社が撤退の判断に踏み切った背景には、監督官庁とヤマトとの間で30年間にわたって繰り広げられてきた確執の歴史がある。
「信書」の定義曖昧
1月22日の夕方、国土交通省5階の記者会見場にヤマト運輸の山内雅喜社長が姿を見せた。発表内容は新商品としか予告されておらず、配布資料のタイトルに「クロネコメール便の廃止について」とあるのを見て、報道各社の記者に驚きが走った。トップの出席も想定外だ。
山内氏は言葉を選びながら語った。「信書の定義や範囲が曖昧で、お客さまが容疑者になるリスクを放置できない」