2015.2.14 05:00
□ワールド・ワイズ・ジャパン代表LOGOSプロジェクト主幹 濱口理佳
■業の根底に在る“危うさ”を意識できているか
遊技産業の「のめり込み」への取り組みが進められていると聞く。依存症対策はもちろん、業界がなすべき「社会で存在することが許されるための努力」に関しては、カジノ法案が衆議院の解散で廃案になろうが、いつカジノができようが、もはやそんなことは関係ない。世間の視線は、いまそこに在るパチンコ・パチスロに向けられている。
さて、アルコール産業にも、日本酒造組合中央会、全国卸売酒販組合中央会、全国酒販協同組合連合会など、その業態によりさまざまな組合が存在する。これら団体には、大手飲料メーカーから街の小売業者まであらゆる規模、業態の企業が参加するが、全体が協力して実施するCSRへの取り組みが「未成年者の飲酒防止」と「アルコール依存症への対策」だ。これらに関しては、昔から継続的かつ積極的に取り組まれてきたが、持続可能な産業として生き残るための視点を、全国卸売酒販組合中央会が2009年10月に「これからの時代の酒販事業のあり方~量から質への転換~」として取りまとめている。
同リポートでは、まずビジョンを策定する前提として「毒にも薬にもなる商品を扱う自分たちの業がどういうものか」を提示し、問題意識の共有を促すとともに、産業特性を踏まえた社会的課題を指摘。「事業環境の変化に対応して新しい規範が求められ、酒類産業に携わる者は社会から評価されかつ尊敬されるよう事業活動を行わなければならない」「企業評価の基準も売上高や業界内におけるシェアから、安全・安心、社会貢献、環境との共生などへシフトしていく。将来的には企業存続・発展に必要な要件となってくる」と、その指針を示している。ここではその一端しか紹介できないが、とにかくあらゆる側面から、自分たちの産業が生き残っていくために必要なビジョンと具体策が描かれている。
現在、アルコールについては、社会的認知の質も向上し、その存在について社会の理解が得られているとの認識に陥りがちであるが、そこに根差して業を営む彼らは、いまなお、自らの業の根底に在る“危うさ”を強く意識し、自らの存在意義の強化に努めている。さて、遊技産業は?
◇
【プロフィル】濱口理佳
はまぐち・りか 関西大学大学院文学研究科哲学専修博士課程前期課程修了。学生時代に朝日新聞でコラムニストデビュー。「インテリジェンスの提供」をコアにワールド・ワイズ・ジャパンを設立。2011年、有志と“LOGOSプロジェクト”を立ち上げた。