新規制基準への適合が認められた関西電力高浜原発3、4号機(福井県)。九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)に次ぐ「合格」だが、いずれも加圧水型軽水炉(PWR)で、福島第1原発と同じ沸騰水型軽水炉(BWR)の審査は進んでいない。原子力規制委員会に審査を申請している計14原発21基のうち、BWRは9基。これらの再稼働が見通せなければ火力発電向け燃料費が膨らみ、電気代の値上げを通じ家計の負担が増しかねない。
高浜や川内に次ぐ再稼働の3番手に有力視されるのは、関電大飯原発3、4号機(福井県)、四国電力伊方原発3号機(愛媛県)、九電玄海原発3、4号機(佐賀県)など、いずれも申請が早かったPWRだ。
これに対し、BWRは事故時に格納容器を守るため、放射性物質をこし取りながら排気する「フィルター付きベント設備」の設置が必要なため、「軒並み申請が遅れた」(大手電力関係者)とされる。
ただ、東京電力柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)など申請中のBWRの出力は9基合計で約930万キロワットにも達し、再稼働できなければ燃料費が拡大し、電気料金の再値上げが広がりかねない。東電は仮に原発が再稼働できなければ、「28年3月期は(黒字化の)見通しがたたない」(数土文夫会長)とし再値上げの可能性を示唆する。
すでに、北海道電力が昨年11月に再値上げに踏み切り、関電も今年4月の再値上げを計画中だ。
第一生命経済研究所の永浜利広主席エコノミストによれば、全国で電気料金が2割上がれば、国内総生産(GDP)を初年度は0・2%、2年目に0・4%、3年目に0・5%押し下げると試算する。原発再稼働の遅れは日本経済に大きな逆風となる。(大柳聡庸)