音楽家・久石譲氏が東日本大震災のチャリティーコンサートをパリで行った際、会場入り口のディスプレーを依頼された「フラワー空間プロデューサー」がいた。「日本再生」をテーマに、震災後の春の訪れで植物が芽吹き育つ大地の力を、日本人の復興の力と重ね、作品に魂を込めた。
今回の主人公は、アトリエオルタンシア代表取締役の落合邦子さん。今年、パリで個展「Eloge de l’ombre」を開き、日本人の美意識を花と和紙を使った空間ディスプレーで表現。このタイトルは谷崎潤一郎の「陰翳(いんえい)礼賛」から取った。
慶応大時代は体育会アーチェリー部に所属。卒業後、日産自動車に入社。仕事も充実していく中、結婚、出産後も続けられるか? と自問自答。当時、稽古として習い始めていたフラワーアレンジメントにひかれ、生涯かけて取り組む仕事に決めた。講師資格を取得し、教室も開いた。大地の産物である植物をより輝かせ、その作品を通して日本の文化を海外に発信できることが好きでたまらない。
当初はマスコミが作りだすトレンドを追いかけ、西洋かぶれのような状態もあった。日本人の美意識に目覚め、自分の花文化に自信を持てるようになった契機は、里山と都会の融合に取り組んだことだ。