2014.12.24 05:00
私は現在、異文化対応研修の講師として活動しています。夫は、カナダ人です。「国際結婚は文化が違って大変そう。うまくやっていくコツは?」とよく聞かれます。「コツは、違いを楽しむこと。AかBかどちらが正しいかより、AもありBもあり」とお答えしています。
これまでいろいろな国に滞在してきましたが、異文化を最も体感したのは、南太平洋に浮かぶ島、サモアです。15年ほど前、サモア人の家庭におじゃまして、一つ屋根の下、数週間を共に暮らしました。壁のない家、お湯の出ないシャワー、ヤモリやゴキブリのはっている天井。普段の日本での生活とは異なり、一瞬びっくりする環境ではありますが、それには一つ一つに理由がありました。壁がないのは、風通しをよくするため。お湯が出ないシャワーは、年間を通して平均気温が25~30度あるので、水でも十分ことは足りるため。ヤモリやゴキブリが天井をウロウロしているのは、人間も含めて皆自然の一部であって、退治するという概念がないためなのです。相手の視点で考えてみると、こうした違いにも納得がいきます。とはいえ、異文化理解は一筋縄にはいきません。かわいいブタの親子が歩いているのを見て、その姿がほほ笑ましく「かわいいですね」と伝えたら、「バーベキューには、最高だよ」と言われて、かなりショックを受けました。
このように異文化理解のプロセスは、理解したかと思えば矛盾に突き当たったり、やっと分かり合えたと思ったら肩透かしを食ったりの繰り返しです。それでもなお異文化との出会いにひかれるのは、自分にはなかった価値観や選択肢を持つ人との出会いを通して、自分を見つめ直したり、相手を知ったりすることで、人生の幅が広がるから、そして相手と分かり合えたときの一体感が心を温めてくれるからです。