米アップルにパソコン向けの部品を供給してきた島野製作所(東京都荒川区)が、アップルを独占禁止法違反と特許権侵害で訴えた民事訴訟の第1回口頭弁論が今月中旬、東京地裁で開かれる。島野の主張によると、不当なリベート要求など下請けに対する「優越的地位の乱用」があったという。時価総額で世界最大の企業を日本の中小企業が訴えるという異例の展開だ。自社工場を持たないアップルは、世界中の取引先と関係を深めてサプライチェーンを構築する手法を取るだけに、裁判の動向次第で波紋が広がる可能性もある。
増産要求後に発注減
島野は、ポゴピンと呼ばれるピンなどを製造・販売する精密部品メーカーで、売上高は数十億円。米インテルや韓国サムスン電子などと取引があり、電気信号のスムーズな伝達や耐久性に優れたピンを製造する技術を誇る。
9年前にアップルの担当者から打診があり、島野は「1次サプライヤー」として取引を始めた。アップルのノートパソコンに接続する電源アダプター側の端子を製造。世界中で使われるパソコンの販売に支障が起きないように中国、タイ、日本(北海道)の3工場で万全の供給体制を整備。双方が利益を得る取引で、アップルとの信頼関係は強固だった。