■稼働率好転 “飲食”に積極投資
日本有数の温泉街を有する大分県別府市。代表的な宿泊施設である「杉乃井ホテル」は2001年に民事再生法が適用され、その後も低迷が続いた。しかし、08年にオリックス不動産が直接経営に関与するようになって業績は急速なV字回復を遂げ、現在の稼働率は99%台に達している。今後は飲食ゾーンへの投資に力を入れ、長期療養客らの集客を目指す。
1960~70年代の高度成長期には団体旅行の需要に支えられ、旅行会社への依存度も極めて高かった。このため80年代以降、個人旅行へのシフトが顕在化した後、対応に苦慮するようになる。ホテルにとって宝ともいえる顧客名簿も整備されず、結果として宿泊客は激減した。民事再生法適用の頃の稼働率は約60%に落ちていた。
その後、アジアからの訪日客をターゲットにした戦略に転換。割安価格が受けて07年頃には宿泊者に占める外国人の割合が4割近くにも達した。その分代償も大きく、「外国人が多いから」といった理由で日本人観光客が寄りつかなくなった。外国人宿泊客の数は、為替の変動によって上下の波が大きく、経営の安定化にも抜本的な改善策が不可欠だった。
オリックス不動産が、直接経営に乗り出したのを機に着手したのが、旅行会社への依存度を引き下げ国内の顧客を大事にすること。全体の集客数に占める旅行会社ルートの割合は8割だったが、新聞やテレビを通じて積極的にPRする手法に切り替え、現在は2割まで低下した。