■石炭火力安定へ「泣いて馬謖を斬る」
原発の再稼働が進まない中、運転開始から40年を迎える老朽原発の廃炉をめぐる問題が顕在化してきた。こうした動きを踏まえ、改めて脚光を浴びているのが石炭火力発電所。石炭は世界各地で産出され、安定的に調達できるからだ。石炭火力の分野で存在感を示すのが日本最大の卸電気事業者であるJパワー(電源開発)。二酸化炭素(CO2)排出量を大幅に低減する技術の実用化に積極的に取り組んでいるからだ。同社の民営化などを先導した中垣喜彦・名誉顧問は、石炭エネルギーセンター(JCOAL)の会長も務めており、「石炭はライフワーク」と石炭火力の重要性を説く。
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◆最後の電源開発ブーム
〈1952年に設立された電源開発は、その前年に日本中を襲った大渇水が設立の追い風となった。当時の電気は6~7割が水力発電に依存しており、渇水によって停電が相次いだからだ。これを受けて電力会社9社だけで十分なエネルギーを供給できるのか、といった世論が強まった〉
「現在の当社事業のベースは90年から数年の間に培われたといえる。松島火力をマイルストーンに、海外炭火力発電所の連続開発が実現し、創立時に次ぐ当社第2の礎石が築かれた。開発計画部長としてその開発指揮を執ったが、実に充実した仕事だった。そのきっかけは電源開発の設立当時の市場環境と酷似している。90年に猛暑が到来しエアコンの急速な普及と相まって、家庭用電力需要がぐんと上昇したからだ。結果、供給力不足が表面化し、最後の電源開発ブームにつながった」