「手績(う)み手織り」という江戸時代の「奈良晒」の製法を守った麻などを扱う生活雑貨の企画製造販売会社、中川政七商店。1716(享保元)年創業、2016年には300周年を迎える老舗だが、伝統的なものづくりを守りつつ、SPA(製造小売り)業態を確立するなど、革新的な事業展開を進めてきた。現在は麻製品のほか、生活雑貨や茶道具などのオリジナル商品を全国の直営店などで扱う。近年は「ブランドをつくる」との視点で、衰退が著しい各地の工芸品製造会社のコンサルティング事業にも乗り出しており、経営支援にも取り組んでいる。
◆3年目、注目の的に
13代目の中川淳社長は、2000年に大学を卒業後、富士通に入社。2年間システムエンジニア(SE)として働いた後「小さい会社に移ろう」と転職を考え、父親が社長を務めていた中川政七商店に入社、麻の雑貨を扱う部門の責任者となった。当時、同部門は赤字で、生産管理さえ確立できていなかった。
「ある程度は覚悟していたので、これだけひどいことがあれば、やるべきことは見えた」と中川社長。手績み手織りの麻や各地の布のテキスタイル雑貨を扱う、唯一の自社ブランド「遊 中川」も、コンセプトが明確ではなかったため、認知度が低かったという。