2014.8.21 04:30
日本企業によるアジアを中心とした海外の市場開拓が活発だ。これに伴い、海外での商品やサービスのPRなどに効果が高いとされる動画を使ったマーケティングの需要が拡大している。こうした動きを踏まえ、映像翻訳を手掛けるインジェスターは企業や自治体向けの字幕制作、吹き替え翻訳サービスに乗り出した。呉希昌社長は「映像による親しみやすく分かりやすい情報発信を通じ、企業の海外展開を支援していきたい」と話している。
--企業や自治体向けサービスを始めた理由は
「日本の映像作品を外国語に翻訳する事業をしている。国民的アニメーションの『ドラえもん』は当社が(カンボジアの)クメール語、モンゴル語の吹き替え翻訳を担当した。しかし、ここ数年間、海外進出する企業からは、自社の商品紹介や社長の話の映像に、字幕を付けてほしいという依頼が増えてきている。自治体からの要望も同様だ。このため、翻訳して字幕を作成するまでのワンストップサービスを開始した」
--他社との違いは
「日本語作品はまず英語に訳され、次に英語から各国語に翻訳することが多い。これでは誤訳につながってしまう。例えばドラえもんの大好物のどら焼きは英語でヤミーバンズ(おいしいパン)と訳されている。しかし他言語に翻訳されたときに、本来の意味が伝わりにくい。できるだけ正確を期するため、当社では日本語から直接各国の言葉に訳している。英語、中国語、スペイン語をはじめとして、韓国語、クメール語、インドネシア語、ベトナム語、タイ語、モンゴル語などのアジア系言語に対応している」
--中国とカンボジアに拠点を構えている
「2011年に中国語の翻訳に対する需要増に応えるため、日本語人材の多い大連に関連会社を設立した。カンボジアでアニメのドラえもんを販売することが決まったときは、販売先の顧客からの要望で、現地事務所を今年開設した。日本国内より低コストでありながら、高レベルのサービスを提供している。他の国では現地の翻訳会社と提携して、各国語への翻訳を行っている。現地でのニーズがあれば、他の国でも事務所を立ち上げる可能性はあり、話が進んでいる案件もある」
--今後の展開は
「アジア最後のフロンティアといわれるミャンマーに注力している。今年だけで4回現地を視察した。アジアの中でも識字率が高いので、字幕への需要は高いはずで現地のテレビ局と提携して、ノウハウと技術を提供している。10年単位で考えれば、東南アジアのほか、アフリカにも進出したい。14年3月期の売上高は4億円だが、16年には倍増を予想している」(佐竹一秀)
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【プロフィル】呉希昌
オ・ヒチャン 1987年大学卒業後、商社勤務、Jリーグチームでの通訳などを経て、2002年2月インジェスターを設立し現職。49歳。東京都出身。
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【会社概要】インジェスター
▽本社=東京都千代田区五番町5-5 KDX五番町ビル4階
▽設立=2002年2月
▽資本金=4300万円
▽従業員=22人(14年7月末時点)
▽売上高=4億円(14年3月期)
▽事業内容=通訳、翻訳、人材派遣・紹介