全国銀行協会(全銀協、254金融機関)は17日、企業がネットバンキングで預金を盗まれる不正送金の被害を防ぐため、企業と銀行が守るべき対策の指針をまとめた。安全対策が不十分な企業に対しては銀行は被害補償しない方針。企業に安全対策の強化を促し、被害を少なくする。
指針では、企業に対して銀行が用意するセキュリティー対策の実施▽基本ソフトウエア(OS)の最新化-など6項目を守るよう求める。企業がこれらの対策を守らない場合、銀行が被害の補償に応じないケースもあるとした。個人は過失がなければ原則として被害を全額補償する。
一方、銀行は、電子証明書のセキュリティー強化や使い捨てパスワードの導入などを講じる。
各行は今後、補償額の上限など具体策を詰めるが、中小・零細企業が資金面などで6項目すべてを実施できない場合もあり得るため、「ケース・バイ・ケースで対応してもらう」(全銀協)という。ただ、各行の対応差が大きくなれば、「対策に手抜かりがある企業が狙い撃ちされる」(地銀幹部)可能性もある。
全銀協が、このタイミングで対策に乗り出したのは、企業の不正送金被害が急増しているためだ。
警察庁によると、不正送金の被害額は今年に入って急増し、すでに873件、14億1700万円(5月9日時点)と、昨年1年間の被害額(14億600万円)を上回っている。送金額の上限が大きい企業の口座が狙われているという。
全銀協の平野信行会長(三菱東京UFJ銀行頭取)は17日の記者会見で、「(銀行に)法的責任はないと考えられる場合でも、経営戦略などの観点から、個別行の判断として法人客への被害補償を検討する」と語った。