富士通が子会社でインターネット接続事業者(プロバイダー)のニフティの売却を検討していることが10日、分かった。人口減少などにより成長の見込めない個人向けのプロバイダー事業から手を引き、法人向けのIT(情報技術)システム事業に注力する。
富士通は同日、「さまざまな検討をしているが、まだ売却手続きに入っていない」とのコメントを発表。入札の実施など売却先の選定方法決定へ詰めの作業を急ぐとみられる。
富士通は2009年、ニフティの売却話を進めていた野副州旦元社長を解任する騒動があって以降、売却話の具体的な進展がなかった。
だが、スマートフォン(高機能携帯電話)やタブレット端末の普及もあり、プロバイダー専業の各社の契約者数は伸び悩んでいる状況。ニフティも携帯電話会社の回線を借りてサービス提供する仮想移動体通信事業者(MVNO)やネットワーク経由でソフトウエアを運用するクラウド事業に注力しているが、今後の大きな成長は見込めないと判断した。
また、ニフティは親会社が展開するパソコン販売にも貢献してきたが、中国や台湾メーカーに押され、パソコン事業そのものが低迷。富士通がニフティを抱える意味は薄らいでいた。
こうした動きは、ほかの電機メーカー傘下のプロバイダーも同様。NECは3月末にNECビッグローブ(現ビッグローブ)を投資ファンドの日本産業パートナーズ(東京)に売却。2月にパソコン事業の売却を発表したソニーも傘下のソネットとの相乗効果がさらに見いだしにくくなっており、業界再編の機運が高まっている。
プロバイダー側としても、親会社の束縛から離れて自由に事業展開した方が成長できるという思惑もあり、こうした事情も今後の業界再編を後押ししそうだ。