2014.3.28 05:00
□三井物産 執行役員ブラジル三井物産社長・藤井晋介さん(55)
--2014年の実質成長率が2%前後とされるブラジル経済の将来性は
「米国の量的緩和の縮小に伴う投資マネーの流出などマイナス要因も指摘されるが、高水準の外貨準備高など経済指標は安定している。金属・エネルギー資源に加え食糧や水資源も豊富という他国にない強みもある。中間層の拡大を背景に消費も活気があり、潜在的なビジネスの宝庫として進出を検討する日本企業が増えている」
--ブラジル日本商工会議所会頭も務めるが、課題は
「中堅企業が進出するには複雑な税制体系や労働者側に過度に優しい労務環境、煩雑な行政手続きが高いハードルとなる。部品メーカーが次々と進出すれば技術移転が進むので、ブラジル側にも利点がある。脆弱(ぜいじゃく)なインフラの改善など投資環境の整備を地道に要望していく」
--三井物産では新興国の中で最大の投資国だ
「昨年だけで約1500億円の事業投資を決めた。東京の本社が持つ営業部隊の全機能がブラジルにあり、引き続き最重点国の一つだ。中でも鉄道一般貨物輸送事業への参画は『ブラジルコスト』とも揶揄(やゆ)される物流コストの削減に向けた新たな挑戦だ。当社も農業事業に参画しているが、ブラジルの穀物生産は輸出余力が大きいが、国内の輸送コストがかさみ、国際競争力を生かし切れていない。長年付き合いのある鉄鉱石の世界最大手、ブラジルのヴァーレと組み、環境にも配慮した大量輸送と港湾整備を進め、潜在的な物流需要を掘り起こしたい」
--ブラジルで有望なビジネス分野は
「中間層が増える中で、成長する消費市場を取り込みたい。教育事業も有望で、ネットを使った通信教育にも商機がある。将来の外資規制の緩和をにらみ、病院事業の可能性も探りたい。自動車メーカーの進出に合わせ、鉄鋼製品や物流などサービス機能を強化していく」
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【プロフィル】藤井晋介
ふじい・しんすけ 東大法卒。1981年三井物産入社。ペルー三井物産、米国三井物産勤務を経て製鋼原料部長、メタル事業部長。2011年4月からブラジル三井物産社長。13年4月から執行役員。岡山県出身。