東京電力の新しい総合特別事業計画(再建計画)が27日、政府に提出された。破綻せずに巨額の賠償金を払い続ける枠組みは、水俣病に揺れたチッソがモデルのようだ。チッソは被害者への補償金を今も払いながら液晶事業で安定した収益を稼ぐ。しかし、政府主導のドラスティックな東電再建策に、他の電力各社は複雑な感情を抱きはじめた。
「東電は筋肉質なスーパーエクセレントカンパニー(超優良企業)になるのでは…」
あるエネルギー大手企業の幹部は警戒感をにじませる。
新計画では、東電は5.4兆円の賠償金を全額負担するが、原子力損害賠償支援機構から最大9兆円の無利子融資を受けられる。同社は数十年かけて融資を返済していく。
実は、同様のスキームで見事によみがえったのがチッソだ。同社は2011年、債務を継承する旧会社(チッソ)と液晶部材を手がける新会社(JNC)に分かれて再出発。新会社が世界トップクラスの液晶事業で稼ぐ利益の一部を旧会社に配当し、旧会社は水俣病確認から約60年が過ぎた現在も公的資金の返済と患者への賠償金支払いを続けている。