復興の現場に漂う不安 「ヒト、モノとも五輪にとられるのでは」

2013.12.5 14:47

 東日本大震災から千日が経過し、被災地はがれき処理などの「復旧」から災害公営住宅の建設など「復興」の段階に移りつつある。だが、建築資材や人件費の高騰の影響で入札は不調が相次ぐ。こうした状況は、東京五輪関連施設の建設準備が本格化する来年以降、さらに増すとみられ、作業の遅れに関係者の焦りは募る。宮城県気仙沼市を訪ねた。

 ◆五輪に「奪われる」

 「震災から2年半以上たつのにこの程度」。気仙沼港にほど近い市街地で、地元のタクシー運転手はこう嘆いた。付近には津波の被害が生々しい建物が点在する。

 気仙沼市ではがれき処理が終盤を迎え、復興事業が本格化しつつある。ある建設業者は「一時は公共事業が減って他の事業も手がけたが今は本業のみ。もっと人を採用したい」と話す。

 だが復興事業は進まない。最近あった災害公営住宅2件の入札はいずれも不調だった。1件は入札額を見直して契約が成立したが、もう1件は近く再入札を実施、完成が計画より遅れる可能性が出てきた。

 背景にあるのは建築資材と人件費の高騰で、関係者が懸念するのは2020年の東京五輪だ。関連施設の準備が本格化すれば、資材も人材も東京に集中し、復興が置き去りにされる恐れがある。

 大成建設の山内隆司社長は「復興も五輪もどちらも大事」と強調する。だが市の担当者は「五輪の準備が本格化する前に復興にメドをつけたいが」と不安を隠さない。

 ◆予算が余る?

 実現の見通しが立たない事業も多い。防潮堤の建設では、着工を急ぐ行政側に対し、一部住民が「高すぎると景観を損ない、観光地としての魅力を失う」と反発。一方で「高台への避難道路を拡張する方が先」といった意見もあるなど、調整は難航している。

 政府は平成23~27年度を「集中復興期間」とし、復興増税などを財源に約25兆円の予算を確保している。だが事業は遅れ気味で「予算を消化できないのでは」といった指摘も出ている。

 そんな声を裏付けるかのように、自民・公明の与党税制協議会は、復興財源の一部である復興特別法人税の廃止を、1年前倒しして25年度末とすることで合意した。政府の経済財政諮問会議は来年度の公共事業費を抑えるよう提言した。

 こうした方針に被災地の焦りは募る。気仙沼市の幹部は「避難道路の拡張や観光資源の復活など、過去の予算で扱っていない案件を、今後の公共事業費で賄いたいのに」と懸念している。(藤沢志穂子)

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