建設現場では、「熟練工、鉄筋工や型枠工、現場の管理責任者などが足りない」(セメント協会の気仙伊作流通委員長)といい、人件費が高騰している。このため、ゼネコン業者が生コンなどの材料費に資金を投入できず、生コン会社にしわ寄せが来ていたのだ。
ただ、国内のセメント生産は高い水準が続いている。セメント協会によると、10月のセメント生産は前年同月比6.6%増の529万6000トン。8カ月連続で前年実績を上回った。同協会は9月下旬、今年度のセメント国内需要予測を従来発表から100万トン増の4700万トンに上方修正した。
セメント業界は、国内向けの生産を優先してフル操業の状態だが、価格が上がらなければ収益アップにつながらない。セメント各社は生コン会社側との交渉を急ぎ、収益改善につなげたい考えだ。
一方、セメント価格の値上げ交渉は、政府が経済界に求める賃上げ要請にも影響を及ぼす。「セメントの値上げをしない限りは、(従業員に)還元できない」(住友大阪セメントの関根福一社長)との声は業界内に強く、関係者は値上げ交渉の行方をじっと見守っている。