自分では「部下の話をしっかり聞いている」「プロジェクトの目的を明確に示している」と思っていても、自分以外の周囲の人たちはそう思っていなかったという経験はないでしょうか。自分自身を過大評価し、「裸の王様」状態となっているリーダーのことを周囲はどう感じているのでしょうか。
上図の調査結果では、リーダーが周囲の人たちより1ポイント以上自身を高く評価している場合に「過大評価」としました。過大評価の項目数が増えるにつれ、周囲が評価するリーダーシップスコアも低くなっています。
原因として、リーダー自身が課題認識を持たないがために、能力向上に取り組むことが少ないことが考えられます。過大評価は、リーダーにとって危険シグナルといえるでしょう。
では、どんな項目が過大評価につながりやすいのでしょうか。過大評価の多かった項目と割合は以下の通りでした。
トップは「会社のビジョン・方向性について話している」で20.6%。続いて「誰にも公平に振る舞っている」と「ビジョンを実現するために具体的な目標を設定している」が18.9%でした。
この上位3項目中2つがビジョンにかかわる項目であるのが特徴です。リーダーはビジョンや長期方針について伝えているつもりでも、周囲には伝わっていないということなのでしょう。リーダー自身、ビジョンが頭の中にあっても、いざ言葉にすると明確ではないケースも多いように思います。
また「公平さ」は、人によって基準が違うため、認識がずれやすい項目といえます。ギャップを埋める第1歩として「誰がどんなことを公平と思っているのか」を知ることが有用になるでしょう。
リーダーには、常に学習する姿勢が求められます。なにより、過大評価に陥らず事実を知るには、フィードバックの機会を設けることが有効です。「どれくらいビジョンは伝わっているのか?」「自分のリーダーシップの改善点はどこなのか?」などを周囲に質問し、常に事実を把握することが、過大評価を防ぐ一番の手段といえます。(番匠武蔵コーチ・エィ コーチング研究所 リサーチャー)