【テレビ還暦60年】
おしゃれなロケ地、流行の最先端をゆくファッション、耳に残る主題歌-。平成初頭に一世を風靡(ふうび)したトレンディードラマは、華やかさや恋愛描写が若者の心を巧みにつかんだ。「トレンディードラマの生みの親」と呼ばれるフジテレビ常務の大多亮さん(54)は、「時代と作り手側の感性、高揚感が重なり、ムーブメントが生まれた」と振り返る。(本間英士)
トレンディードラマが登場した時期はドラマ不況といわれ、特に若い女性の「ドラマ離れ」が指摘されていた。当時のフジでは、ドラマ制作から撤退し、制作会社に全て委託する案も議論されていたという。
29歳だった大多さんは、「背水の陣」でプロデューサーを任された。野島伸司、坂元裕二ら当時20代の若手脚本家を次々に抜擢(ばってき)し、キャストも浅野ゆう子、浅野温子の「W浅野」や鈴木保奈美、織田裕二ら若手中心で固めた。
時はバブル絶頂期。女性誌を山のように積み上げて参考にした。劇中の舞台を流行のおしゃれな店にしたり、衣装にスタイリストをつけたり…。