【ハザードマップ】清涼飲料水メーカー　東北ビバレッジ

　■大手依存裏目　自社開発できず

　６月下旬、夏の繁忙期を前に山形市の清涼飲料水メーカーが経営破綻に追い込まれた。東北ビバレッジが東京地裁に民事再生法の適用を申請。負債総額は約１４億円だった。

　同社は大手飲料メーカー向けのＯＥＭ（相手先ブランドによる生産）供給を手がけ、大手メーカーの要請に応じて設備投資を行ってきた。しかし、大手メーカーのコスト削減や内製化に伴って受注が減少し、行き詰まった。

　◆夏の繁忙期前に破綻

　同社は倒産した缶詰メーカーの機械設備を競売で競り落とし、東北罐詰（かんづめ）として１９６５年に設立された。同社と缶詰メーカーの経営者は親族だった。

　当初はフルーツ缶詰などのＯＥＭ供給を主体にしていたが、７４年に缶飲料の工場を稼働させ、７８年と８８年には生産ラインを増強して缶飲料のＯＥＭにシフトしていった。缶飲料の売れ行きは好調で、７８年３月期に売上高２３億７５００万円、最終利益４００万円だった業績は、８８年３月期には売上高３８億６６００万円、最終利益４５００万円に拡大した。

　主力品が缶飲料に移り、９１年には社名を東北ビバレッジに変更。その年に缶飲料工場の増築に２億３０００万円、機械設備の導入に１０億７０００万円の計約１３億円を投じた。資金は政府系金融機関から５億４０００万円を借り入れ、残りは主力仕入れ先だった製缶業者から調達。本格的な缶飲料の生産体制を整えた。

　ところが、その後、経営は悪化に転じた。９５年３月期は売上高６１億５９００万円（売上比率は缶飲料６０％、缶詰４０％）を上げていたが、缶飲料の売り上げが落ち込み、９８年３月期の売上高は４８億４６００万円に減少した。

　９８年６月、再浮上のチャンスとなるペットボトル飲料の製造委託の商談が舞い込んだ。当時、小型サイズのペットボトルが出始め、飲料容器はペットボトルに変わろうとしていた。製造に必要な建物や機械設備一式などの費用２４億５０００万円は発注者の大手飲料メーカーが負担し、東北ビバレッジは工場を賃借して製造を請け負った。資金繰りに窮していた東北ビバレッジには好条件の商談だった。

　ペットボトル飲料工場は９８年７月に稼働したが、原材料を支給する大手メーカーが工場運営の主導権を握った。製造を担当するだけの東北ビバレッジは利益を上げることが難しく、過去の設備投資の借入金が重荷にもなり、利益はほとんどなかった。ただ、新たな仕事で何とか資金繰りを回すことはできた。

　ペットボトル飲料にシフトした東北ビバレッジは、不採算事業の缶詰部門からの撤退を決断した。これに伴い２００５年３月期の売上高は３７億４００万円と前期より１７％落ち込み、缶詰製造設備の除却損を計上し、２７００万円の最終赤字となった。

　◆設備投資借入が重荷

　さらに、大手飲料メーカーは、生産の効率化とコスト低減に向けて清涼飲料水を自社工場で製造するようになった。このためＯＥＭが中心で自社ブランドを持たなかった東北ビバレッジは、深刻な受注減に見舞われた。

　１２年１２月期（決算期変更）の売上高はピーク時の半分以下の２８億５３００万円に落ち込み、４３００万円の赤字を計上した。その後も厳しい状況から抜け出せず、ついに力尽きた。（東京商工リサーチ）

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【会社概要】東北ビバレッジ（６月下旬時点）

　▽本社＝山形市

　▽設立＝１９６５年６月

　▽資本金＝３０５０万円

　▽従業員＝４７人

　▽事業内容＝缶飲料やペットボトル飲料の製造

　▽負債総額＝約１４億円

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　〈チェックポイント〉

　東北ビバレッジは、倒産した親族が経営する前身企業を引き継いだスタート時点でハンディを抱えていた。他社と技術力に大きな差はなく、大手メーカーへのＯＥＭ供給で活路を見いだそうとしたが、自社ブランドの育成には目が向かなかった。

　こうして自力での製品開発ができないまま業績悪化が続き、大手メーカーの内製化で生き残る道を完全に閉ざされた。

　結局、清涼飲料事業を総合食品メーカーのあさみや（大阪府摂津市）に譲渡し、同社が１０月１日に新会社を設立して事業再生に乗り出した。独自性を打ち出せない中小企業には容赦ない淘汰の波が待ち受けていることを教える経営破綻だった。（東京商工リサーチ取締役情報本部長　友田信男）