■使命感と高いモラル
東洋ライス社長の雑賀慶二さんが、無洗米の開発を決意したのは、雑賀さんが夫人と淡路島に旅行に行ったとき、「船で紀淡海峡を渡る際、黄土色の海を見て、水質汚染のひどさに衝撃を受けた」からだった。
「これは人ごとではない。汚染の原因にはコメのとぎ汁もあるに違いない。実際にとぎ汁には、リンや窒素が多く含まれ、ヘドロの原因であることもわかっていた。だからこそ、とぎ汁が出ないコメ、つまり無洗米を開発しなければいけないという使命感が生まれた」と雑賀さんは振り返る。
この無洗米の機械は、レンタルで全国の精米所に貸し出した。同社はレンタル料と修理代で収益をあげているが、開発が評価されて1991年に無洗米で農林水産大臣賞を受け、その2年後にはこの無洗米が「瀬戸内海の浄化に貢献した」として環境大臣表彰を受けたのである。
無洗米の開発は、日本のコメ文化にとっても画期的なことであった。
雑賀氏は「もっとコメをおいしく、健康的な食材にできないか」ということを考え続けていた。