原発の停止で火力発電の燃料に使うLNG(液化天然ガス)の費用増が電力会社の体力を奪う中、発電コストの安い石炭火力発電に注目が集まっている。中でも、石炭火力で日本一の出力をもつ中部電力・碧南(へきなん)火力発電所(愛知県碧南市)はいまや、「中電を支えている」(同社幹部)とまで評される“屋台骨”的な存在になっており、「世界一の石炭火力創造」と銘打ったプロジェクトが進行中だ。「中電で最も活気ある職場」といわれる同発電所がめざす「世界一」とは-。
原発比率11%…弱点が強みに
碧南火力発電所は、平成3年に営業運転を開始した中電唯一の石炭火力発電所。5基の発電ユニットがあり、トータル出力は410万キロワット。石炭火力発電所としては世界で5本の指に入る規模で、中電内でもLNGの川越火力発電所(三重県川越町)に継ぐ、2番目に大きな発電所だ。
「発電量や発電コスト、発電効率といった面だけでなく、すべての要素で“世界一”をめざそうと取り組んでいる」と同発電所の中島伸幸業務課長は「世界一プロジェクト」を説明する。東日本大震災以降、浜岡原発(静岡県御前崎市)が全機停止する中で、「中電を支えている」という使命感のような思いが背景にはある。