西武HDの再上場をめぐる同社と筆頭株主の投資ファンド、米サーベラスとの対立が泥沼化してきた。サーベラスのTOBにより、株主総会で特別決議に拒否権を行使できる3分の1超を確保するのはほぼ確実。実現後は発言力がさらに強まり、西武HDが経営方針の見直しを迫られる可能性がある。
両社は当初、昨年12月の東証1部上場を目指してきた。再上場は西武HDにとって、前身の旧西武鉄道が証券取引法違反事件で2004年12月に上場廃止となって以来の悲願だったからだ。
会社再編の過程で06年1月に1600億円の資本増強を行い、うち1000億円を引き受けたのがサーベラス。「二人三脚で経営再建を進めてきた」と西武HDの関係者は話す。だが、売り出し価格をめぐる思惑の差が表面化した。関係者によると西武HDの想定は1株当たり1000~1500円。対するサーベラスは2000~2500円。金融危機の影響でサーベラスは米国での投資案件が不調で、より多くの上場益を得たいと考えているふしがある。
そこでサーベラスは、売り出し価格を引き上げようと西武HDにリストラ策を提案したが、西武HDは拒否。主力行のみずほコーポレート銀行や大株主である日本政策投資銀行も西武HDと同じ考え方とされる。
サーベラスは主に外国人株主から株式を買い集める意向という。3分の1超の取得に成功すれば、西武HDが会社の解散や合併など重要な決定を単独でできなくなり、リストラ策の実施を迫られ、再上場がさらに遅れる可能性も出てきた。